美容室の悩みと税理士の必要性
華やかな美容業界にあこがれて、
美容師を目指す人は年間1.5万人前後が美容専門学校を卒業し、
美容業界に飛び込みます。
しかし、華やかなその裏には様々な苦労が待ち受けています。
美容室は日頃どんなことに悩み、どんな時に税理士が必要になるのでしょう。
1つずつ検証していきます。
美容室が抱える悩み
美容室は、激務と薄利、低賃金との戦いです。
また、美容室と聞くと、皆、間違いなく以下のようなイメージを持ちます。
『カットとカラー、パーマなどをやってくれるとこ』
これは、美容業界は表面的には誰に頼んでも大きな差をつけづらいサービスということの表れです。
また、数十人を抱える美容室のトップスタイリストにでもなれば話は別ですが、
通常はカット価格もカラー価格も±500~1,000円以内の幅で収まります。
そのため、商売として強い、現金商売とはいえ、
継続して利益を出し続けるのが難しい業界です。
また、開業するときにも店舗改装で多額のお金が必要となり、
日々、カラー液やシャンプーの仕入れが発生し、経理作業が煩雑となります。
朝9時開業で夜も9時ぐらいまで12時間開店しているお店が多いため、
その後、掃除、収支確認をすると、帰宅は深夜となります。
お客様からの指名予約があると、少々の風邪では休めません。
激務に耐えかねてスタッフが急に途中から来なくなることもあります。
美容室は、そとから見るよりもずっと多くの困難が待ち受けています。
それを支えるのが税理士の務めです。
美容室に税理士は必要?
美容室にとって税理士は、ただの節税のためのパートナーではありません。
美容室の店長が経営に専念できるよう経理処理を引き受け、
開業時や法人成り時に銀行から融資を受けやすいよう確定申告時に節税に走りすぎない調整も必要です。
また、スタッフさんの働きやすい環境整備の構築をお手伝いする、
社会保険労務士の3号業務といわれる人事コンサルティングも必要となるでしょう。
美容室ほど税理士がフットワークよく動かないといけない業界は無いでしょう。
美容室も経営に専念するため、
税理士に期待することをまずは全て書き出しましょう。
その際、経営計画書をまとめると良いでしょう。
経営計画書というと難しいものを考えがちですが、
『先々のことを数字をもって予想する』
ということさえ外さなければまずは大丈夫です。
その中で『いつ』『どうなっていたいのか』ということを
明確にし、その時にどのような助けがあればうれしいかを書きだしましょう。
それが税理士に期待することです。
では、具体的に1年という期間の中で税理士を必要とするタイミングを見てみましょう。
1年の中で見る美容室が税理士を必要とする瞬間
美容師が税理士を必要とするタイミング1:確定申告時
確定申告時に税理士が必要となることは間違いありません。
それぐらい自分でできると思って、自分で処理しようとすると、
倒れます。
なぜか、確定申告は毎年2月15日~3月15日の間に税務署に申告する重要な税務申告です。
※日付は年によって土日祝日を挟むと若干前後します。
この時期は、
『卒業シーズン』でもあり、
『入学直前シーズン』でもあります。
そんな1年間でも有数の込み合うタイミングで、
確定申告をやろうとすると過労で倒れます。
実際、この時期になんとか自分で確定申告業務をやろうとして
倒れた美容室の店長を何人も見てきました。
風邪をひくと、美容室を休業しないといけなくなります。
また卒業や入学は、通っていた美容室を入れ替わったり、
これまで理容室に通っていた子が美容室に通い始めるなど、
ビジネスチャンスも転がっています。
結果的に、そのビジネスチャンスも逃し、
売上も下がるというダブルパンチとなります。
美容師が税理士を必要とするタイミング2:融資を受けたい時
融資は、融資を受けたいと思ってから経理をしっかりしても遅いのです。
融資を受けたいと思う3年前から経理をしっかりして、
黒字化しておかないといけません。
なぜか、銀行は通常、融資の依頼を受けた場合、
過去3年間の決算状況を確認し、事業の安定性、収益性を確認します。
そのため、税金を払いたくない余り、
ギリギリ黒字や赤字にしていると本当に必要としているときに
融資を受けられなくなります。
美容師が税理士を必要とするタイミング3:年末調整時
年末調整は1年間、社員さんに支払っていた給料から天引きしていた
源泉所得税が本当に正しいかどうか、税金の確定を行う業務です。
少し専門的な作業が必要となるため、これも店長やオーナーが行おうとすると、
大変煩雑になります。
こういったことは税理士事務所や会計事務所にとっては、
毎年の恒例行事ですのでスムーズに、しかも安価(だいたい社員1人500~1,500円)で行ってくれますので、税理士事務所に依頼すると良いでしょう。
次に美容室の成長に応じた税理士を必要とするタイミングを見てみましょう。
美容室が税理士と顧問契約を結ぶ時
1、開業時
開業した時に顧問契約をすぐ結ぶことがベストです。
それは、上で書いた通りです。
しかし、開業してすぐに売上が上がって黒字化するというわけではないと思いますので、
まずは無料相談だけでも行い、経理の方法や開業届などの書き方など、
基本的なところだけでも聞きに行きましょう。
その際、商工会議所などの無料の税理士に相談しても悪くないですが、
この時期から税理士としっかりパイプを作っておくのが良い経営者です。
将来の顧問契約を見越して、税理士を探して相談に乗ってもらうと、
税理士もいざという時に助けてくれやすくなります。
2、人を採用した時
人を採用するといことはお客様が増え、
順調に経営が軌道に乗り始めたということです。
その場合、スタッフの給料や働きやすい環境整備など、
先々を見越した動きをすることが美容室を大きく成長させるポイントです。
美容室に詳しい税理士なら、美容室のスタッフの数と売上を見れば、
今後の成長度合いもある程度予測できます。
この時期から働きやすい環境整備をしておくと、
離職率がグッと下がり、他の美容室を一気に追い越すことができます。
3、法人成りする時
言わずもがなですが、法人成りするタイミングです。
法人成りのタイミングで税理士と顧問契約を行うと、
設立費用が無料になることが多いのは過去、何度も説明している通りです。
ある意味、このタイミングが税理士と顧問契約を結ぶ重要なチャンスです。
4、チェーン化した時
2店舗、3店舗と美容室を拡大していくと、
店長からオーナーに位置づけが変わっていきます。
店長は『社長兼プレーヤー』ですが、
オーナーは『社長』です。
そのため、店舗全体を見渡した事業計画や融資計画、
返済計画、人材採用計画を立てる必要があります。
このタイミングになると税理士がいないと業務は回りません。
そのため、将来のチェーン化を考えているときは、
いち早く税理士に相談しましょう。
税理士の選び方の3つの誤解
法人化するなら税理士は必要だけど、個人事業なら税理士は不要だろ?
とはよく言われているが、それは本当か?
結論から言えば、半分正解で半分間違いです。
『個人事業なら税理士は不要』が半分正解の理由
まず、正解の理由ですが、ハッキリ言えば、個人事業の経理や決算に相当する確定申告はさほど難しくありません。
今は、「やよいの青色申告」や「会計ソフトのfreee」などの会計ソフトがとても発達していますので、気軽に会計記帳ができます。
そして、『決算書作成』というボタンを押せば、自動で決算書まで作成できます。
さらに、「会計ソフトのfreee」にいたっては、チャットでの記帳の説明方法まで受け付けてくれるので、ほぼ迷うことはありません。
また、確定申告に関しては国税庁が提供しているホームページ内の『確定申告書等作成コーナー』に数字を入力するだけで、簡単に確定申告書を作ることができます。
もしよくわからないことがあれば、最寄りの税務署に電話なり、訪問して問い合わせると、めちゃくちゃ丁寧に答えてくれるので安心です。
意外と思われるかもしれませんが、税務署の人は昔と違ってめちゃくちゃ腰が低く優しい方ばかりです。
『個人事業なら税理士は不要』が半分間違いの理由
ただし、落とし穴があります。
「会計ソフトのfreee」にしても、相談を受ける先のサポート担当は、『記帳の素人』です。
マニュアル通りの対応しかできません。
売上計上をいつに設定するのか、
『入金時』『発送時』『納品時』
によって、実は売上の金額は大きく変わります。
売上の金額が変わるということは、すなわち税金の金額も変わるということです。
また、消費税の『簡易課税』『原則課税』についても、計算を簡単にするため安直に『簡易課税』を選ぶ個人事業主が多いですが、そのように、安直に決めてしまうと、後で税金でびっくりすることがあります。
実際、管理人である私は、簡易課税にすべきか原則課税にすべきかを安易に考えて、『簡易課税』を選んだため、年間で15万円近く無駄に多く税金を払ってしまいました。
会計ソフトのサポート担当は、あなた専門のサポートではありませんし、あなたから顧問料をもらっているわけではありません。
だから、あなたにとって『得になるような提案や損しないような提案』はしてくれません。
また、税務署も丁寧に教えてくれますが、税務署のアドバイスは、『節税のためのアドバイス』ではなく、『適正な申告のためのアドバイス』です。
しかも、記帳の内容に関して、科目ごとに正確に入力されているかどうかなどチェックしてくれません。
そのため、もし誤って作成した決算書を持って税務署に相談に行ったとしても、その決算書が正しいという前提で確定申告書の作成のアドバイスをしてくれるだけです。
また、税務署と言えども時々、誤ったアドバイスをする時があります。
そんな時、税務署に責任を問えるかと言えば、『責任は問えない』のです。
だから、個人事業と言えども、売上が大きく、利益が400万円以上出ている時は、節税のために税理士と顧問契約を結ぶ方が、はるかにメリットがあります。
法人後に関しては、圧倒的に税理士と契約するメリットがあります。
法人後に税理士と顧問契約を結ぶメリット4選
法人の決算処理はかなり複雑なのでその手間が省ける
個人事業の時は、会計ソフトを使用して、記帳すれば自動で決算書が作成できて後は申告するだけというシンプルでしたが、法人になると、『法人事業税』『法人市民税』『法人県民税』など支払い増えます。
また、年に1回、社会保険の算定基礎届を出す必要があり、社員の年末調整、社員の市民税の特別徴収義務などやることが色々と出てきます。
社長の仕事は、会社を大きくし、安定させることです。
そういったことに社長の『脳のメモリ』をムダに消費させてはいけません。
だから、税理士と顧問契約を結びましょう。
理想は、法人設立を税理士に依頼してそのまま顧問契約を結ぶパターンです。
そうすると法人設立費用(10万円以上)が無料になることが多々あります。
税理士の顧問契約を結ぶと弁護士や社労士などのネットワークができる
税理士を含めた士業は、自分の職種ができる仕事の幅が法律でキッチリ決まっています。
そのため、他の士業の仕事を行うことができません。
だから、弁護士や社労士などの横のつながりをしっかり持っている税理士が多いのです。
税理士と顧問契約を結ぶとそういったネットワークを利用して、何か困った際には専門家に相談することができます。
逆に税理士と顧問契約を結んでいないと、法律上のトラブルや人事に関して困ったことが合っても相談先を自分で探さないといけなくなります。
個人事業主の時よりも税務調査に入られる確率が格段に上がる
個人事業主でも税務調査が入ることはありますが、法人ほどではありません。
法人の場合、税務調査は7年に1回、ほぼ必ず来ると思って下さい。
税務調査官によって、どこまで深く調べるかは変わってきますが、基本的に税務調査官は『税金を取るために』来ます。
そのため、素人が対応すると、不用意な発言で深く調べられて、払う必要のなかった税金を払うことになりかねまえん。
税務調査は急に来ることはありません。
連絡があると、2~4週間ずらすことは可能です。
その間に、何を見せて何を伏せておくかなどは入念に税理士と打合せしていないと多額の税金を持っていかれます。
資金調達時に税理士の作った決算書は信頼を得られる
会計の素人が作成した決算書よりも税理士が作成した決算書のほうが銀行や信用金庫などの金融機関は信用してくれます。
それは言わずとも分かることかもしれませんが、そのことが力を発揮するのは『資金調達』のときです。
税理士が顧問契約に入っているのと入っていないのとで、融資の幅が50%以上変わることがよくあります。
それが税理士の信頼度です。
そのため、仕入れて加工して販売するメーカーや、百貨店などに卸して入金が5ヶ月後の手形払いなどの場合、売上は上がっているのに、資金繰りで倒産ということにならないよう、事業開始の前から税理士と相談して顧問契約をスタートさせましょう。
では、どういう税理士が必要でどういう税理士が不要なのかを実際に検討していきます。
こんな税理士が経営者に必要だ!5選
人事や許認可の相談ができる税理士
人事評価制度や国や都道府県の許認可について相談ができる税理士がいると社長はよりしっかりと仕事に集中できます。
人事評価制度や許認可について、社長が脳のメモリを消費することはあってはいけません。
しつこいようですが、社長の脳のメモリは全て経営に使うべきです。
経営のアドバイスができる税理士
経営についてアドバイスができる税理士は非常に少ないので、もしそういった税理士がいるならすぐに顧問契約しましょう。
税理士は基本的に経営のアドバイスをすることを意図的に避けています。
それは、自分達は会計・財務は分かっても経営は素人であるという自負からです。
しかし、より多くの職種を見ている税理士ならそれができるはずなのです。
そこに逃げずに立ち向かって経営のアドバイスまでできるように能力を高めた税理士はとても貴重なので迷わず顧問契約しましょう。
融資に強い税理士
税理士が皆、融資に強いかと言えばそういうわけではありません。
60才以上の年配の先生の中には、『会計記帳』と『確定申告』だけを仕事としている先生もたくさんいます。
だから、税理士と会った時は、過去の融資の件数と金額を聞いて経験を確認しましょう。
4ヶ月以上前に節税対策を指摘してくれる税理士
本当の節税対策は、決算日の4ヶ月以上前から行わないできません。
決算書の作成が遅い税理士だと、決算日の1週間前に税金の見積もりを出してきて、『今年は税金が多いので
現金を置いておいてくださいね。』などとふざけたことを言ってきます。
そういう税理士はすぐに切りましょう。
節税対策をちゃんと行うには、決算日の4ヶ月以上前です。
それだけ猶予があると、いくらでも費用の計上ができます。
記帳ミスが無い税理士
『当たり前だろ?』とおもった社長は甘いです。
税理士の中にもミスが多い人は時々います。
帳簿のミスというのは、
『費用計上忘れ』
『期の途中で科目が変更になっている』
『分からない会計処理を全部、役員借入金(貸付金)で処理している』
などです。
税理士を選ぶ際は、記帳ミスが無い税理士を選びましょう。
ただ、そうはいっても、これは契約してからでないとわかりません。
そのため、顧問契約後に記帳ミスが続く税理士は切りましょう。
その点については次で説明します。
こんな税理士は不要だ!5選!
会計ソフトに対応していない税理士
60才以上の税理士の中には会計ソフトを使わずいまだに手計算の人がいます!
びっくりです!(笑)
会計ソフトに対応しているのは、税理士の絶対条件と思って下さい。
年配の税理士を紹介された際は、気軽に『どの会計ソフトに対応していますか?』と聞きましょう。
メールの返信が3日以上来ない税理士
連絡の遅い税理士は、社長の意思決定を遅らせてしまいます。
そのため、メールでの連絡後に2日以内に返信が来ない税理士はやはり解約しましょう。
今は、外にいてもスマホで顧問先からのメールを確認できる時代です。
メールを見れなかったという言い訳は通用しません。
高飛車で横柄な税理士
『俺は先生だぞ!』という対応の税理士は迷わず切りましょう。
1つ覚えておいて頂きたいのは、
この税理士の先生は不快だ
と直感で感じたら、すぐに契約を切ることです。
社長の本能を信じて下さい。
もし、そのまま顧問契約を維持した場合、何かトラブルが発生してからでは遅いのです。
記帳ミスを3回以上繰り返した税理士
記帳ミスを3回以上繰り返した税理士は、問答無用で顧問契約を解除してください。
その税理士は税理士の適正がありません。
申告漏れが1度でも発生した税理士
申告漏れが1度でも発生したら最悪です。
特にありがちなのが、『消費税の確定申告』です。
いくらその税理士と仲が良くても、よく対応してくれていても、すぐに顧問契約を解除してください。
人の良い社長の場合、税理士と解約するのを躊躇する方がおられます。
しかし、ビジネスと友達関係をゴチャゴチャにしてはいけません。
確定申告は、税理士にとって最重要業務です。
それを忘れるような税理士は、その税理士には悪いですが、適正ゼロです。
そんな税理士といると、社長の経営が傾きます。
まとめ:美容室のための間違えない税理士の選び方
美容室は、成長も早いですが、衰退も恐ろしく早いです。
過去にこんなことがありました。
ある髪のアレンジで特許を取得した美容室が、
年商1500万円から一気に6000万円まで駆け上がりましたが、
働きやすい環境整備を怠り、
融資を考えず節税に走りすぎたため、
そこから3年後に倒産したというのを目の当たりにしました。
だから、いち早く経理、会計、税金、融資のプロである税理士と顧問契約を結ぶことが事業の成長には欠かせません。
あなたの開業した美容室を本当に成功させたいなら、税理士は真剣に探してください。