顧問税理士を変更するには、まず現在、契約している顧問税理士との契約を解約、
つまり契約解除する必要があります。

税理士との契約を解約するとなると、税理士の業務に関する不満、
よくあるのが記帳ミス、申告ミス、対応への不満などがあるかと思います。

そのため、税理士も社長も互いに感情的になりやすく、
なるべく顔を合わせ無いよう、
電話だけで税理士を変更したい旨と、契約を解約する旨を伝えるだけで済ませる方が多くおられます。

しかし、その場合、後日、トラブルになる例を見てきました。

何月何日に契約を解約したのかわからなくなる
契約期間中の仕事がおざなりになる
会計データや業務のの引継ぎが行われないなどです。

キレイに税理士を変更し、顧問契約を解約するには、
何に気をつけてどう対応すればよいのか、
3つのポイントに絞ってお伝えします。

1,税理士の契約解除は必ず文書で契約の解約を通知する

なぜ口頭ではなく、文書で税理士の契約解除しないといけないのか?

口頭で契約の解約を伝えると、
『いつ伝えたのか』
『誰に伝えたのか』
『顧問料の引き落としはいつまでなのか』
『契約の解約時期はいつなのか』
があやふやになります。

そのため、文書で通知しましょう。

記載内容は、以下の6点です。


  1. 契約の解約を通知した日付

  2. 誰宛に発送なのか明記

  3. 顧問料引き落とし最終日の確認

  4. 契約の解除日がいつまでか

  5. 契約期間内で行ってもらう業務内容

  6. 書類とデータの引継ぎ日

税理士の契約解除の書類の郵送は、特定記録郵便か簡易書留で送る

そして、この契約解除の文書は手渡しではなく、
郵送で送ってください。

手渡しの場合、またいつ受け取ったのか、
誰が受け取ったのか、という点でもめる場合があります。

郵送も普通郵便ではなく、
以下のいずれかで送ってください。

■特定記録郵便
料金:基本の料金+特定記録160円
メリット:郵便物を郵便局に差し出した記録が残る
デメリット:ポスト投函のため届いていないと言われることがある

■簡易書留
料金:基本の料金+書留料金310円
メリット:相手に直接手渡しで、かつ郵便局側に記録も残るため届いていないとは言わせない
デメリット:特定記録に比べて少し割高

税理士など士業のように法律にたずさわる人とのやり取りは、
常に『証拠』を意識してください。

ここまでやらなくとも。。
と思えるぐらいがちょうどよいです。

2,税理士の契約解除する前に引継ぎを確認する

税理士によっては、契約の解約の意思を伝えてから、
急に態度がそっけなくなり、引継ぎをしない人もいますが、
そのようなことを許してはいけませんし、受け入れてもいけません。

書類とデータの引継ぎ

預けている書類、作成しているデータをすべて受け取ってください。
特に帳簿書類に関しては、費用や売上に関わるものですので、
受けとるのは必須です。

また、すでに入力しているデータについても、
契約期間内に終えているものはCSVやExcel形式、
または会計ソフトのデータ保存形式で受け取ってください。

これらのデータは次の変更後の税理士に渡すこととなります。

業務の進捗状況の引継ぎ

業務の進捗状況も確認してください。
仮に契約の解約月が8月の場合、8月までの仕事は行っているはずです。

そのため、8月までに行った業務について、
状況を必ず確認してください。

記帳はどこまで終えているのか、
会計ソフトと連動した社員の給与の支払も委託しているならどこまえ終えているのか、
行政書士業務も依頼していたなら、
許認可の申請はどういう状況なのか
細かく1つずつチェックしていきましょう。

その際、こちらも口頭ではなく、書面で受け取ってください。

同じく、言った言わないになると、後々面倒なことになります。

3,税理士の契約解除するとしても顧問料を支払っている分はきっちり履行してもらう

顧問契約締結の際に契約解除の時の記載も入れる

理想は、顧問契約締結時に、契約解除の際の規定も別で締結しておくことをオススメします。

顧問契約締結時は、税理士と社長も信頼関係が構築されている時ですので、
契約解除の際の話をするのは『野暮』だと考える人もいますが、
そうではありません。

契約とは、そもそも信頼関係が崩れた時の防衛線です。

なにか、トラブルが合ったらこの書類に基づいて法的に対処します、
そういう書類が契約書です。

そのため、契約を締結する際に契約解除について話し合うのは、
極めて妥当なことなのです。

別の例ですが、ドイツでは結婚届を結ぶ際に、
離婚の際の財産分割方法を夫婦間契約で締結しております。

そのため、ドイツでは離婚後の財産分与で揉めることはありません。

ビジネスでも同じことです。

揉める前に揉めたときのことを考えて先手を打つ。
この意識を忘れないようにしてください。

契約解除を通告した後に、もし税理士が履行しなければ

それでも税理士が揉めた場合の対処法をお伝えします。

1,都道府県ごとにある税理士会に相談してください。
2,それでも変わらなければやむを得ません。
  法的手段に訴えてください。

税理士への懲戒については省令でも定められております。

ホ 業務け怠(委嘱された税理士業務について正当な理由なく怠ったことをいう。)
戒告又は1年以内の税理士業務の停止
https://www.nta.go.jp/taxes/zeirishi/zeirishiseido/shobun/index.htm#name01

税理士会には紛議調停制度という税理士が行った業務に関して紛争の調停を立てることができます。
以下、東京税理士会の紛議調停制度の説明です。

東京税理士会の会員が行った税理士の業務に関し紛争を生じたときは、本会に対し、紛議の調停を申し立てることができます。この紛議の調停は、裁判外紛争処理の一つとして、税理士会が税理士法第49条の2第2項第7号の規定に基づいて行うものです。

■ 申し立てができる紛争
本会に紛議の調停の申立てができる紛争は、本会の会員(税理士法人を含む。)が、「税理士」又は「税理士法人」の名称を用いて、日本国内において行った税理士の業務に関し生じたものです。
したがって、本会の会員が「税理士」としてではなく他の資格等で行った業務や海外で行った業務に関し生じた紛争は、本会に対して調停の申立てを行うことができません。
また、本会会員以外の税理士又は税理士法人との紛争については、当該税理士又は税理士法人が所属する税理士会に対し調停の申立てを行うこととなるので、当該税理士会に直接お問い合わせ下さい。

■ 費用の負担
調停費用は原則として無料ですが、特別に要した費用(弁護士報酬等)を負担していた だくことがあります。
http://www.tokyozeirishikai.or.jp/general/consultation/mediation/

ここまで行くことはまれでしょうが、
相手は税理士ですので、法的手段になりますと、第三者に明示できる証拠が必要となります。

1人で戦おうとせずに、弁護士や次の依頼する変更後の税理士に相談すると良いでしょう。

まとめ:税理士と契約解除する際は、紳士的に、しかし毅然と対応する

税理士との契約解除の場合の具体的な方法を記しましたが、
大切なことを一言でまとめますと、
契約の解約の意思表示と伝達は、
紳士的に、しかし毅然と対応することです。

感情的にならず、無理をゴリ押ししようとせず、
粛々と契約内容に乗っ取り、要求すべきは要求することです。